● 商標の国際出願(マドプロ)の指定国について
2025年3月現在、マドプロ(マドリッド協定議定書)の締約国は115ヶ国に上り、世界の商標出願の半分以上をカバーできるようになっています。
一の国際出願において、複数の締約国を指定することによって、マドプロ制度のメリットを十分に享受することが出来るようになります。
では、どこの国や地域を指定して国際出願をすれば良いでしょうか。
まず、国際出願に係る商標を使用する国や地域が既に決まっているようであれば、当該国を指定して出願するのがベストです。
また、近い将来に商標を使用する予定がある国や地域も含めておくと良いでしょう。
未だ商標の使用国や使用予定国が決まっていない場合は、ひとまず市場規模の観点から検討してみると良いと思います。
市場規模で見ると、まずはアメリカ,中国,欧州連合(EU)が挙げられます。
また、それらの周辺国であるカナダやイギリス,韓国,インドなども検討対象となります。
東南アジア諸国への進出をお考えの場合は、タイ,ベトナム,マレーシア,インドネシア,シンガポール,フィリピンがまず候補に挙げられます。これらはLazada Groupの国々でもあります。
さらに周辺国を押さえておきたい場合は、カンボジア,ブルネイ,ラオスもマドプロ加盟国となっています。
オセアニア諸国では、オーストラリアに加え、ニュージーランド,サモアがマドプロ加盟国となっています。
このうち、オーストラリアとニュージーランドは、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定の加盟国でもあります。
その他のTPP加盟国は、ブルネイ,カナダ,チリ,マレーシア,ペルー,シンガポール,ベトナム,イギリスで、日本を含め全12ヶ国となります。
TPP加盟国のうち、ペルーについてはマドプロ非加盟国であるため、当該国への直接出願が必要となります。
中東では、アフガニスタン,アラブ首長国連邦(UAE),イスラエル,イラン,オマーン,カタール,シリア,トルコ,バーレーンがマドプロ加盟国であり、年々加盟国が増えてきている状況です。
ここで、シリアを指定したマドプロ出願に関し、国際登録時にイスラエルを指定している場合には、公益的理由(Public Policy)として、当該国際出願は拒絶されてしまう点に注意が必要です。
対策としては、別途シリアに国内出願を行うか、または、シリアで保護認容声明を受けた後で、イスラエルを事後指定する措置が考えられます。
また、中東諸国については、当該国への直接の国内出願と同様、費用が非常に高額となる点に注意が必要です。
具体的には、例えば、アラブ首長国連邦(UAE)における一区分毎の個別手数料はCHF1,630(現在のレートで約29万円)、バーレーンはCHF1,517(現在のレートで約27万円)というように、全締約国のうちで最も高額な価格帯となっています。
この点は更新手続についても同様であるため、これらの国を含めていると、一気に相当高額な費用が掛かることになります。
従いまして、個別手数料が高額な中東諸国については、費用発生時期をある程度調整できるように、他の国々とは別の国際出願とすることを推奨しています。
アフリカ諸国ですと、経済規模の観点からは、エジプト,アルジェリア,モロッコ,ケニアなどが指定国の候補となります。
なお、アフリカでトップクラスの経済規模を誇るナイジェリアや南アフリカは、現時点ではマドプロに加盟していません。
中南米については、まだマドプロ加盟国が少なく、メキシコ,ベリーズ,コロンビア,ブラジル,チリの5ヶ国に止まるため、直接出願の比率が高くなります。
また、カリブ諸国についても、キューバやトリニダード・トバゴ,アンティグア・バーブーダ,ジャマイカ他7ヶ国に止まりますので、網羅的に出願する場合は、現地に直接出願を行う必要があります。
以上、世界の地域毎に広くマドプロ締約国を見て参りましたが、マドプロ国際出願における、指定国選定のご参考になれば幸いです。